ももたろう　だい2わ

　おじいさんとおばあさんは、それはそれはだいじにしてももたろうをそだてました。ももたろうはだんだんせいちょうするにつれて、あたりまえの子(こ)どもにくらべては、ずっとからだも大(おお)きいし、力(ちから)がばかにつよくって、すもうをとってもきんじょの村(むら)じゅうで、かなうものは一(ひと)人(り)もないくらいでしたが、そのくせ気(き)だてはごくやさしくて、おじいさんとおばあさんによくこうこうをしました。
　ももたろうは十(じゅう)五(ご)になりました。
　もうそのじぶんには、日(に)本(ほん)のくに中(じゅう)で、ももたろうほどつよいものはないようになりました。ももたろうはどこかがいこくへ出(で)かけて、うでいっぱい、力(ちから)だめしをしてみたくなりました。
　するとそのころ、ほうぼうがいこくのしまじまをめぐってかえってきた人(ひと)があって、いろいろめずらしい、ふしぎなおはなしをしたすえに、
「もうなん年(ねん)もなん年(ねん)もふねをこいでいくと、とおいとおいうみのはてに、おにがしまというところがある。わるいおにどもが、いかめしいくろがねのおしろの中(なか)にすんで、ほうぼうのくにからかすめとったとうといたからものをまもっている。」
　といいました。
　ももたろうはこのはなしをきくと、そのおにがしまへいってみたくって、もういても立(た)ってもいられなくなりました。そこでうちへかえると早(さっ)そく、おじいさんのまえへ出(で)て、
「どうぞ、わたくしにしばらくおひまを下(くだ)さい。」
　といいました。
　おじいさんはびっくりして、
「おまえどこへいくのだ。」
　とききました。
「おにがしまへおにせいばつにいこうとおもいます。」
　とももたろうはこたえました。
「ほう、それはいさましいことだ。じゃあいっておいで。」
　とおじいさんはいいました。
「まあ、そんなえんぽうへいくのでは、さぞおなかがお空(す)きだろう。よしよし、おべんとうをこしらえて上(あ)げましょう。」
　とおばあさんもいいました。
　そこで、おじいさんとおばあさんは、おにわのまん中(なか)に、えんやら、えんやら、大(おお)きなうすをもち出(だ)して、おじいさんがきねをとると、おばあさんはこねどりをして、
「ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ。ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ。」
　と、おべんとうのきびだん子(ご)をつきはじめました。
　きびだん子(ご)がうまそうに出(で)き上(あ)がると、ももたろうのしたくもすっかり出(で)き上(あ)がりました。
　ももたろうはおさむらいのきるようなじんばおりをきて、かたなをこしにさして、きびだん子(ご)のふくろをぶら下(さ)げました。そしてもものえのかいてあるぐんせんを手(て)にもって、
「ではおとうさん、おかあさん、いってまいります。」
　といって、ていねいにあたまを下(さ)げました。
「じゃあ、立(りっ)ぱにおにをたいじしてくるがいい。」
　とおじいさんはいいました。
「気(き)をつけて、けがをしないようにおしよ。」
　とおばあさんもいいました。
「なに、大(だい)じょうぶです、日(にっ)本(ぽん)一(いち)のきびだん子(ご)をもっているから。」とももたろうはいって、
「では、ごきげんよう。」
　とげん気(き)なこえをのこして、出(で)ていきました。おじいさんとおばあさんは、もんのそとに立(た)って、いつまでも、いつまでも見(み)おくっていました。

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