桃太郎 第2話


 お(じい)さんとお(ばあ)さんは、それはそれはだいじにして(もも)()(ろう)(そだ)てました。(もも)()(ろう)はだんだん(せい)(ちょう)するにつれて、あたりまえの()(ども)にくらべては、ずっと(からだ)(おお)きいし、(ちから)がばかに(つよ)くって、()(もう)をとっても(きん)(じょ)(むら)じゅうで、かなうものは(ひと)()もないくらいでしたが、そのくせ()だてはごく(やさ)しくて、お(じい)さんとお(ばあ)さんによく(こう)(こう)をしました。
 (もも)()(ろう)(じゅう)()になりました。
 もうそのじぶんには、()(ほん)(くに)(じゅう)で、(もも)()(ろう)ほど(つよ)いものはないようになりました。(もも)()(ろう)はどこか(がい)(こく)()かけて、(うで)いっぱい、(ちから)(だめ)しをしてみたくなりました。
 するとそのころ、ほうぼう(がい)(こく)(しま)(じま)(めぐ)って(かえ)って()(ひと)があって、(いろ)(いろ)(めず)らしい、()()()なお(はなし)をした(すえ)に、
「もう(なん)(ねん)(なん)(ねん)(ふね)をこいで()くと、(とお)(とお)(うみ)のはてに、(おに)(しま)という(ところ)がある。(わる)(おに)どもが、(いかめ)しい(くろがね)のお(しろ)(なか)()んで、(ほう)(ぼう)(くに)から(かす)()った(とうと)(たから)(もの)(まも)っている。」
 と()いました。
 (もも)()(ろう)はこの(はなし)()くと、その(おに)(しま)()ってみたくって、もう()ても()ってもいられなくなりました。そこで(うち)(かえ)ると(さっ)(そく)、お(じい)さんの(まえ)()て、
「どうぞ、(わたくし)(しばら)くお(ひま)(くだ)さい。」
 と()いました。
 お(じい)さんはびっくりして、
「お(まえ)どこへ()くのだ。」
 と()きました。
(おに)(しま)(おに)(せい)(ばつ)()こうと(おも)います。」
 と(もも)()(ろう)(こたえ)ました。
「ほう、それは(いさ)ましいことだ。じゃあ()っておいで。」
 とお(じい)さんは()いました。
「まあ、そんな(えん)(ぽう)()くのでは、さぞお(なか)がお()きだろう。よしよし、お(べん)(とう)をこしらえて()げましょう。」
 とお(ばあ)さんも()いました。
 そこで、お(じい)さんとお(ばあ)さんは、お(にわ)のまん(なか)に、えんやら、えんやら、(おお)きな(うす)()()して、お(じい)さんが(きね)()ると、お(ばあ)さんはこねどりをして、
「ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ。ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ。」
 と、お(べん)(とう)()()(だん)()をつきはじめました。
 ()()(だん)()(うま)そうに()()()がると、(もも)()(ろう)のしたくもすっかり()()()がりました。
 (もも)()(ろう)はお(さむらい)()るような(じん)()(おり)()て、(かたな)(こし)にさして、()()(だん)()(ふくろ)をぶら()げました。そして(もも)()のかいてある(ぐん)(せん)()()って、
「ではおとうさん、おかあさん、()ってまいります。」
 と()って、(てい)(ねい)(あたま)()げました。
「じゃあ、(りっ)()(おに)退(たい)()してくるがいい。」
 とお(じい)さんは()いました。
()をつけて、()()をしないようにおしよ。」
 とお(ばあ)さんも()いました。
「なに、(だい)(じょう)()です、(にっ)(ぽん)(いち)()()(だん)()()っているから。」と(もも)()(ろう)()って、
「では、ごきげんよう。」
 と(げん)()(こえ)(のこ)して、()ていきました。お(じい)さんとお(ばあ)さんは、(もん)(そと)()って、いつまでも、いつまでも()(おく)っていました。

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